ウイスキーを知る / 7 / 8

銘柄の種類 — シングルモルトからボトラーズまで

ウイスキーの棚に並ぶ言葉 — シングルモルト、ブレンデッド、シングルカスク — は、味の説明ではなく「どこの原酒を、どう組み合わせたか」の分類です。ここを押さえると、ラベルから中身がかなり読めるようになります。

「シングル」が意味するもの

まず誤解の多いところから。シングルモルトの「シングル」は「1つの樽」ではなく「1つの蒸溜所」という意味です。ひとつの蒸溜所で造られたモルトウイスキーだけを瓶詰めしたものが、シングルモルトです。

実際には、その蒸溜所の何十、何百という樽を選んで混ぜ合わせています。だから毎年同じ味に仕上げることができるわけです。この「同じ蒸溜所の樽同士を混ぜる」作業はヴァッティングと呼ばれます。

主な分類

呼び名中身
シングルモルトひとつの蒸溜所のモルトウイスキーだけ
シングルグレーンひとつの蒸溜所のグレーンウイスキーだけ
ブレンデッドモルト複数の蒸溜所のモルトを混ぜたもの
ブレンデッドモルトとグレーンを混ぜたもの
シングルカスクたった1つの樽だけから瓶詰めしたもの

ブレンデッドは「格下」ではない

世界で飲まれているスコッチの大半はブレンデッドです。モルトの個性とグレーンの飲みやすさを組み合わせ、何十種類もの原酒を設計図どおりに配合してつくられます。

毎年、原酒の在庫も出来も変わるなかで同じ味を保ち続けるのは、シングルモルトを仕上げるのとは別種の、そして決して易しくない技術です。ブレンドを担う職人(マスターブレンダー)が業界で重んじられるのは、そのためです。「シングルモルトが上でブレンデッドが下」という理解は、実態を捉えていません。

シングルカスク — 二度と同じものは出ない

シングルカスクは、1つの樽だけを瓶詰めしたものです。混ぜて均すことをしないので、その樽の個性がそのまま出ます。当たれば強烈に良く、そうでないこともあります。

1つの樽から取れる本数は限られます。仮に200Lの樽で、蒸発と加水を考えれば、数百本といったところです。売り切れれば終わりで、同じものは二度と出ません。多くはボトルに樽番号と瓶詰め本数が記されます。

ボトラーズ — 蒸溜所ではない瓶詰め業者

ウイスキーは蒸溜所だけが瓶詰めするわけではありません。樽を買い付けて自社の名前で瓶詰めする独立瓶詰業者(インディペンデント・ボトラー、通称ボトラーズ)という存在があります。ゴードン&マクファイルやシグナトリー、ダグラス・レインなどが知られています。

ボトラーズの面白さは、蒸溜所の公式ボトルとは違う選択をするところにあります。蒸溜所が自社の看板の味に合わせて樽を選ぶのに対し、ボトラーズは「この樽が面白い」という基準で選べます。公式には存在しない熟成年数や、閉鎖した蒸溜所の原酒に出会えるのも、この人たちのおかげです。

ニューメイク — ウイスキーになる前

蒸溜したての無色の酒はニューメイク(ニューポット)と呼ばれます。スコッチを名乗るには、オーク樽で最低3年の熟成が必要です。3年に満たないものはウイスキーではありません。

樽詰め時の度数を63.5%前後に調整するのが伝統的な慣習で、この数字はいまも多くの蒸溜所で使われています。

ゲームではこうなっている

『蒸溜所の帳簿』では、銘柄を設計するときに種類(モルト/グレーン/ブレンデッド)・熟成年数の範囲・度数・樽材・飲み頃を指定します。指定に合う原酒が熟成庫にあるぶんだけ、瓶詰めできます。

3年未満はニューメイク扱いで、商品には使えません。ここは現実の規則をそのまま持ち込んでいます。開業してから最初のウイスキーが売れるまで3年かかる — この待ち時間が、このゲームの序盤そのものです。

ブレンデッドはモルトとグレーンの両方の原酒があってはじめて開発でき、配合比とそれぞれの熟成年数を別々に指定します。グレーンの価値は単体では低め(0.42倍)に設定してありますが、ブレンドの土台としては欠かせません。安い原酒に役割を与える、という現実の構造を写したものです。

シングルカスクは技術レベル4で解禁され、熟成庫の台帳から1樽ずつ瓶詰めします。銘柄の枠を消費しないので、良い樽を見つけるたびに出せます。ボトラーズは買い付けイベントとして登場し、樽をまとめて買っていきます。自分で瓶詰めするか、樽のまま売るか — その比較ができるよう、提示額が「自分で商品化した場合の概算の何%か」を必ず表示するようにしました。

関連: 蒸溜のしくみ度数とボトリングシングルカスクボトラーズブレンデッド

この記事について

ウイスキー経営シミュレーション『蒸溜所の帳簿』を作っている人間が書いています。 運営するKF-Works株式会社は秩父で蜂蜜酒(ミード)の醸造所を営み、ウイスキーの輸入・販売も行う酒類の会社ですが、 ウイスキー蒸溜所の現場出身ではありません。ゲームの数値を決めるために調べたことを、調べた順に書いています。

そのぶん、多くの入門記事とは書き方が違います。「熟成には時間がかかる」で終わらせず、 何年でどうなるのかを数字で置き、現実と食い違う部分は食い違うと明記します。 ゲームの都合で現実と逆にしてある箇所(樽の値段など)は、そのつど本文で断っています。

記述の誤りを見つけられた場合は kudo@kf-works.co.jp までお知らせください。確認して直します。

この記事で書いた仕組みは、『蒸溜所の帳簿』のなかで実際に数字として動いています。無料・登録不要で、ブラウザだけで遊べます。